酒縁てる が物語に登場しました

酒縁てるが、常連さんたちがfacebook上で創ったリレー小説に登場しました。

なかなかの力作です。ありがたいので、まとめました。お二人とも、ありがとう。
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むかぁし昔、常陸の国に煩悩和尚という坊さんがおったそうな。

和尚がある日、会田の浜を散歩しておると大きな甕が流れ着いていたそうな。

和尚は流れ着いた甕を恐る恐る覗いてみたところ、甕から赤ん坊が飛び出しました。

赤ん坊の前掛けには「零点九九」と書かれていたので、和尚は一未と名付けお寺で育てることにしました。

一未はすくすくと育ち、13才になったある晩「和尚さん、実は僕は月から来た調査官なんです。

和尚さんの欲深振りをたくさん見させてもらいました。

あなた程ダークサイドに染まりきった方は、見た事がございません。

僕の力では、あなたをお救いする事は出来ないみたいなので、僕はまた旅に出ます。」

と言って、満月の晩、助けた亀に乗って田町という竜宮城へ向かい、そこで幸せに暮らしたそうな。

和尚に見切りをつけた一未が出て行ってからというもの和尚はショックのあまり更に教えを会得すべく毎日毎日怪しいお経を唱えておりました。

そんなある日のこと、和尚の枕元になんとも怪しげな爺様が現れこう言いました「一未に会いたければ てる に行け。 ヤツはきっとそこに帰ってくる」と。

夢か現実か半信半疑の和尚でしたが、とりあえず”てる”に行ってみることにしました。

和尚が恐る恐る てる の扉に手を掛け開けてみると、そこには泉村を夜な夜な荒らし回り、村人達を恐怖に震え上がらせている巨神兵 順子 が一未を肩に乗せて宴の真っ最中じゃった。

和尚は何事も無かったかなように、扉を閉めて帰ろうとした時、店の娘てるが和尚に助けを求めたのじゃ。

「和尚様、どうか助けてくださいませ。もう10日もお店に居座られ、飲んだ食ったの宴を続けており、困っております。

主の はこ座衛門も、買い出しに行くと言って出て言ったきり、3日も帰ってきません。

お願いを聞いて頂けましたら、半年間特別サービスでお店をご利用していただきます。」

「娘よ、その言に偽りはないな。」

和尚は、それまでの人生で見せた事もないような笑みを湛えた顔で、

「よしっ、拙僧に任せなさい!!」

と力強く応えると、何故か駅に向かって走っていってしまいました。

「ふぅ、あぶねぇあぶねぇ巨神兵順子相手じゃ命がいくつあったって足りやしねぇ」和尚がブツブツ言いながら駅へ走っていると、突然何かにぶつかって倒れ込んでしまった。

和尚は膝小僧を擦りむいて半べそかきながら見上げると、そこには大きなカツオを担いだ漢が立っていた。そしてその漢は唐突にこう言った「このカツオを食わせりゃ、あいつら正気に戻るはずだ!」

なんとこの笑顔が眩しい恰幅のいい漢は、はこ座衛門だったのだ。

和尚はニヤリと笑い「諦めたら、そこで試合終了ですよ!」と訳のわからないことを叫ぶと、はこ座衛門を連れだって”てる”に急ぐのだった。

もう膝小僧の痛みなど気にもならなかった。

“てる”に着いたはこ座衛門は、見事な包丁遣いであっという間にカツオのお刺身をつくり上げましたが、ニンニクを擦っている隙に、なんと和尚が出来上がったカツオを、

「見せてもらおうか、連邦の白いヤツとやらの性能をぉぉぉぉぉ」

と絶叫しながらまな板毎持って”てる”を飛び出して行きました。

一心不乱に走り続け、気が付けばお寺とも”てる”とも全然違う方向にある玉川団地村に着いてしまいました。

もう暗くなってきたし、お寺から遠くに来てしまったので、心細くなって泣きながら♪蝋人形の館♪を歌っていると、

「お〜しょおさん、和尚さん〜、お腰に付けたカツオさん〜、ひとつ私にくださいなぁ」
と、木の上から聴こえてきました。

腰になんか持ってねぇけどなぁ、と木の上を見ると、玉川団地村で、いや小名浜村界隈でも有名なイタズラ猿のカズトが一番搾りを片手に、和尚の持つカツオを狙っておりました。

渡さぬぞぉ、渡さぬぞぉ。

和尚の気迫に押される事なく、カズトは和尚に飛び掛かりました。

揉み合いになり、ガッチリ四つに組み合ってしまったばっかりに、和尚は池にカツオを落としてしまいました。

絶望に暮れる2人でした。

すると突然池が眩く光り、池の中から2人に負けるとも劣らない怪しいオジさんが現れました。

「お前が落としたのは、この赤メガネか?それともこの白メガネか?」

和尚は、

「赤メガネっ」

と朗らかに答えましたが、池から出てきたオジサンは、

「カツオじゃないとこ、突っ込まんかいっしかも赤選ぶし(涙)」

と、とても悲しい気持ちになりながら、池に引っ込んでしまいました。

和尚がカツオを持って行ってしまったせいで、”てる”の混乱は治まるどころか、より一層ひどい状況となってしまいました。

そこに1人の若武者が現れました。
「僕の大好きな”てる”でなにしてるんだち!」

若武者は腰からカツオを抜くやいなや瞬く間に厚切りカツオをカウンターに並べました。

「ショウガとニンニクどっちにするでちか?」

「P太郎! いいところに! ここは俺に任せろっ!」
ハコ左衛門がタイミングよくすりおろしニンニクを出し、さらに阿吽の呼吸で看板娘のてるが日本酒を出したものだからもうたまりません。

順子と一未は我に帰り、いつもの楽しい飲兵衛に戻ったのでした。

「P太郎お帰りなさい! 立派になって!」看板娘のてるは立派になったとはいえ相変わらず手足の短いP太郎が懐かしくて嬉しくてたまりませんでした。

「でもよ。若武者ってそれほど若くもねぇだろうよ」とハコ左衛門

「うるさいでち! そこは言わない約束でち!」

「笑って笑ってみんなで幸せになろうよ」居酒屋てるはいつも笑い声が絶えない店になりましたとさ。

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